井田講演の趣旨(12/3) 松下 島原市災害対策課
村松のまとめ
- 三宅島噴火の流れ
- 第1ステージ:
6/26頃、島の西南部で地震が多発。やがて、海に。マグマが西方海域に移動。
海底噴火する。神津島、新島方面の地震もこれによるもの。
ここまでは、我々は完全に把握していた。
- 第2ステージ:
雄山陥没→カルデラの形成
マグマが山麓で消費されて、山頂部のマグマがマグマだまりに向けて下がったため、
山頂が陥没。その際に、規模の小さな噴火が発生(7/8や7/14)
- その後が不可解。
8/18、あんなに大きな噴煙があがったのはなぜか。マグマが下がったことによって、マグマ内部の圧力が低くなり、ガス等が出やすくなったのではないか。
実際、9月以降大量の火山ガスが出ている。
- 8/29の噴火
上方に行く噴煙と、山麓に下がるのがあった。後者は、海まで達したが、これを火砕流と呼ぶかどうか、かなり議論があった。温度の高くない危険ではない火砕流だった。
- 第3ステージ:
黒色の噴煙が白色になったように、噴火そのものが起こる可能性はなくなったと思う。
だから、9月初めには、もう噴火はないだろう、と考えていたが、やはりその通りであった。
ただ、マグマから大量のガスが発生し、それが出やすい環境になっている。
ただし、三宅島のような例は世界的にみてもない。これほど多量のガスが出る例はない。
(数例を出して比較。桜島の10倍以上と強調)
- 今回の噴火の考え方(井田個人の考え)
- マグマが上昇したが、それが山麓に向かった。
- 山頂からマグマは下がって、山頂陥没した。
- マグマ内の圧力が下がってガスが出やすくなった。
- 火山ガスが大量に出ることとなった。
- 火山活動が活発な時期は終わった。
- 今後の見通し
- 火山ガスについて:
気象庁から毎日出される火山ガスのデータを見る。
敢えて、非常に楽観的に考えて、この3ヶ月でSO2の量が1/3になったと仮定する。
住民が住めるのは、桜島レベルと仮定する。
直線的に落ちれば、あと、3ヶ月で桜島レベルになる。
指数関数的に落ちると仮定すると、1年程度はかかる。
ただ、突然ガスが出なくなる可能性があるので、3ヶ月〜1年ということになる。
ただし、これはガス量が3ヶ月で1/3になったと考えてのことである。
- 噴火
- 噴火の可能性はほとんどない。
- ただ、ガスの通り道がつまったら、爆発するかもしれない。
- 質疑応答
- エトナ火山(イタリア)のガスはどの程度で収まって、住民は帰ることができたのか
- エトナでは始終ガスは出ているし、噴火も毎日のように起こっている。住民は火山の近くには住んでいない。そのため、エトナと三宅島は比較できない。
三宅島への帰島の時期については、今はまだわからない。もう少し長い間のデータ収集が必要。
- 観測機器の設置はいつ頃か。充分なデータの集積はいつ頃か。そして、我々島民はどのくらいの年月の避難生活を想定していいのか。はっきりと述べて欲しい。
- 観測機器は8月時点での1/3程度。観測点も少ない。が、地震や傾斜計の観測データでは異常は見つかっていないし、必要なデータは入ってきている。火山ガス排出量のデータの蓄積が必要。避難期間については、講演でも述べたように、わからない、というしかない。火山ガスの放出がなくなったら大丈夫か、というのも、その後の噴火の可能性もあるので、今は大丈夫とは言えない。
なお、12月中旬に火山噴火予知連絡会の会合があり、そこで検討されるだろう。
- なぜ緊急火山情報を出さないのか。
- 緊急火山情報とは、「生命・身体にかかわる火山活動が発生した場合」、つまり、事後に発表されるものであり、有珠山や三宅島の6月で出したのは、厳密に言えば、ルール違反。試行的なものであったと理解している。人的被害を後追いするものであり、この辺は整備中。緊急か臨時かは重視せず、中身を重視した上で、考えて欲しい。
緊急火山情報と臨時火山情報でみなさんの受け取り方がそれほど違うのかを初めて知ったとき、驚いた。
- 行政は緊急火山情報ならすぐに避難。臨時火山情報だとそうしないようだが。
- 火山情報の種類と行政の対応は連動すべきものではない。火山情報の中身が重要。8月の噴火のときには、東京都には気象庁の人と一緒に行って説明した。
- 8月18日の噴火では、最初8000mという発表でそれが後日訂正された。ところが東京都は未だに8000mだと言っている場合がある。本当に伝えたのか。
- 伝えているが、気象庁と行政の間で100%正確に伝わっているというとそうではないので、これから改善すべきものと思う。
- 8月18日の噴火では人は死ななかったけど、大きな噴石や火山礫が部落まで飛んできた。これでも緊急火山情報は出ないのか。人が死なないと出ないのか。
- さきほども述べたように、天気予報と違って、事後に出すべきものである。
- 雄山の陥没は非常に深く大きいので、雄山自体が崩壊する恐れはないのか。山の崩落などの影響はないか
- 陥没した山はそんなに不安定なものだと考えていない。内側に軽く崩壊していくことはあるが、それ以上のことはないだろう。住民の生活している島の外周部に影響が及ぶことはないだろう。
2000/12/04 revised