2000/10/08〜10/14
09/04-15 09/16-23 09/24-30 10/1-7 10/15-21

 10月8日(日)

 実家の黒猫を荼毘に付すため、実家に行き、その後高尾にある動物霊園へ。
紅葉は、まだだが肌寒い。
 あんな小さな猫を焼くには、大きな釜だった。
煙突からは、煙も出ない。池の鯉に餌を投げたりして、時間を待つ。

 猫の骨は、身体の小ささに見合って、なのか、細く、薄く、もろかった。
中に小さな牙と、小さな指の骨。

 骨壺に納め、家に安置し、昼食を取って部屋に帰った。

 午後、島魂HPのための勉強。有珠山ネットの先輩が、
HPをいじれるように教えてくれるのだ。
私は、パソコンは通信でおしゃべるするだけだった
インターネットであちこち見るのも、HPを作るのも、興味がなかった。
というわけで、道のりは遠い・・・。

 皆様、いつか島魂のページが、突然、へんなになったら、
きっとそれは、私のせいでございます・・・。



 10月9日(月)

 今日は体育の日である。10日じゃなくて、9日の体育の日、
私は、ものすごーーーーーーーく、すわりが悪いと思うのですが、
皆様は、いかがですか?

 私は、何を隠そう10月10日生まれ。
生まれてこの方、誕生日は、ずっと体育の日とマグロの日だった。
それなのに、今年から、体育の日というもっとも大きな、
しかも祭日だったりするイベントだけ、無くなってしまった。
ちぇ。9日生まれの人。お誕生日と体育の日おめでとう。

 午前中、島魂のメンバーが来て、あれこれ相談。
というか、愚痴の言い合い、アホなうわさ話・・・。

 午後、妹宅にお呼ばれ。
私の誕生日を祝ってくれると言うので、おじゃまする。
隣に建っているデパート探検が目的だ。

 このデパートは、先々週行ったとき、1階の、高級婦人服売場の真ん中に、
なぜか、瓶詰めなめ茸が山積みになったワゴンが置いてあったりして、
シュールでおもしろい。気が抜けない感じがいい。そして、地下の魚売場と、
レストラン街にある甘味処のチョコレートパフェが気に入っている。
今日は、ケーキも買ってもらった。

 妹の家に戻り、ごちそうになる。
猫が死んでしまったばかりで、今ひとつ、調子は出ないが、楽しかった。
それに、我が妹が、料理ができるとは思っていなかったので、びっくりした。
お見それいたしました。



 10月10日(火)

 いつもと変わらない普通の日。
お誕生日おめでとう>自分
ありがとー    >自分。
ぜんぜん、めでたくなんかないや。

 友達や、家族に、「何が欲しい?」と聞かれる。
欲しいもの・・・。あまり、言ったことないけれど、
私は子供の頃から欲しい物があった。
「権力」と「超能力」。
お金で買える物は、欲しかったら自分で買えばいいだけの話。
それにお金で買える物は、お金さえあれば、誰でも持つことができるのも、
つまらない。

 でも、最近、ちょっと思う。「権力」は、維持するのが大変そうだから、
やっぱり、いらないや。ものぐさになったらしい。
 その点、「超能力」はいい。雄山の噴火を止めることができる。
それができないんだったら、トチ狂っちゃった人の頭を元に戻すことができる。
自分の利得しか考えないで、村民を苦しめるヤツらは、みんな火口行きだ。
なんにもできない自分。無力な上に、無能力だ。イヤになる。
全部イヤになる。

 なんにもしないで、布団をかぶっているのが一番幸せ。
それでも、電気代や水道代はかかる。息をするにもお金がかかるんだ。

 島に帰れる日まで、冷凍人間になっていられれば、楽なのに。
眠れない苦しい夜もないだろう。ごはんも食べなくてすんで、
水も飲まなくていい。誰か、私に冷凍人間体験チケットをくれないかな。

 壁1枚隔てた向こうには、人の普通の生活がある。
同じ形の部屋に入っていて、私は避難民。
目の前を通り過ぎるのは、普通の人間の日常生活。
 ただそれだけのことが、これほど辛いとは。
普通の人間の生活をすることは、避難民でなくなること。
避難民であることを脱ぎ捨てたい。でも、島に帰りたい。
避難民である現実は、変わらない。

 夜、河原の上に、食べかけのみかんみたいな、だいだい色の月があった。
今夜は、十三夜。ってことは、知らないうちに十五夜は過ぎちゃったわけだ。
団子を作らなくてすんでラッキーだったのか、
団子を食べ損ねてアンラッキーだったのか。
それにしても、どこにもススキが見あたらないよ。



 10月11日(水)

 はぁーーー。歯が痛い。
虫歯があるのは知っていた。何となく疲れたり、変な天気だと、
頭痛と歯痛の中間のような痛みが・・・。

 歯医者に、早く行った方がいいんだろうなぁ。
虫歯って、大きくなればなるほど、治療とお金が大変になるよねぇ。
でもなぁ・・・。
 奥の歯なら、どうでもいい。けっこう、前の方なのよね・・・。

 島にいた頃の話。なぜか、私が歯医者に行くと、その後すぐに噴火した。
そのジンクス、まだ続いているのかな?ずっと歯医者に行っていないから、
雄山が不発気味なのかな・・・。

 私が歯医者に行って、清漁水産が魚を開いて、
土屋食品の若旦那が商工会に行く。なぜか、この3つが重なると大噴火。
 あの頃、いろんな予想屋がいて楽しかったな。自分が歯医者に行く日は、
それとなく、清漁水産の様子をうかがったりして。
まぁ、魚開くって聞いても、歯医者には行ったんだけど。

 島の歯医者さんは、この4月に島に赴任してきたばかり。
すごく張り切っていたのに、最後の診察の日、
「こっちの虫歯、今、手をつけて、削ったりしてしまって、そのあと治療が
できなくなると、余計に悪くしてしまう。確実に治せる時間が持てるまで、
手をつけずに、様子を見ましょう。」と言った。
歯医者さん、島に戻ってきてくれるのだろうか。
それまで、この虫歯は、とっておこうか。

 気が重かったのは、歯が痛かったからだけではない。
今日は、出かける先があった。
あれよあれよという間に、出発の時間。
それでも心の抵抗で、もう、遅刻確定の時間になりそう。
そんなとき、約束のキャンセルの電話が来た。

 きゃっほー!歯痛も、すっ飛んでしまった。
あーよかった。突然、部屋の空気が軽くなって、洗濯も掃除も
はしゃぎながらやってしまった。
これで、外に行かないで済む、お金を使わないで済む。

 そんなに、イヤなら、はじめから約束なんかしなければいいのにね。
なんでなんだろう。約束するときは、それほど考えていないんだけど、
いざ、出かける段になると、化粧ができない。着替えられない。
どうしても玄関の方に歩いていけない。

 私、たぶん変だ。



 10月12日(木)

 島にいる頃は、毎日11:53からと18:53からの天気予報を
欠かさずに見ていた。比較的見やすい時間に放送されるもので、
関東地方の予報の際、伊豆諸島南部の風・波をやってくれるからだ。
 民放でも大島までは、やるのがあるけれど、伊豆諸島南部がちゃんと映って、
かつ、天気図が見られるので、毎日の生活に欠かせなかった。

 最近は、テレビを見なくなった。電気代が心配、というのもあるが、
ニュースも天気予報も、ここの生活には必要がない。少なくとも、私には、
どうでもいいことになってしまっている。

 でも、ふと何かのはずみで、天気予報を見るとき。
ついくせで、伊豆諸島南部を見てしまっている。一番最後、風・波の画面がでて、
「あ!東京は、どうだった?」と気づく。

 三宅島に風が吹こうが、波が立とうが、関係ないのにね。
それでも、表示がナライだと、「飛行機入るなぁ。」
ナガシだと「布団干せるな。」なんて、ほとんど条件反射のように、
思ってしまう。

 東京の毎日には、あんまり自然現象を気にかけずに済む。
雨、風、晴れ、三宅のようにはっきりしていない。
人の生活は、天気に関係なく営まれてゆく。

 それにしても予報でいうほど、晴れていない気がするのだが。
何だろう、この、黄土色のような、灰色のような、澱みは。
お日様はでているようなんだけど、空が青くない。何となく薄曇りのような。
でも、洗濯物はちゃんと乾く。不思議だ。

 団地の中庭にでた。さすがに、買い物に行かないといけなくなったので。
ついこの間まで、私を苛立たせた、キンモクセイが散りはじめて、
アスファルトに橙の吹き溜まりかできている。
誰かが丹誠込めたであろう、コスモスが揺れている。
薄曇りの白っぽい空に濃淡の紅色。細い葉の緑。
「きれいだな。」と思った。

 さて、自転車。久しぶりで、しかも、借り物のため尚更、
どうもフラフラヨロヨロ、調子が悪い。だいたい、ちょっとした上り坂になると、
全然進まず、しょうがなくて、降りて自転車を押す。
自転車を押している距離が長くなると、なんか、つまんない。
押すために自転車があるわけじゃないぞ。

 見切り処分品だけを買ったスーパーの帰り。
今度はかごいっぱいの加重に下り坂だ。けっこう、速度がでる。
速度と一緒に、音もでる。重すぎるんだろうか?
なんか悪い事しているような気がして、自転車を降りたら、音が止まった。
そっかー、重すぎたのか・・・。
 って、じゃぁ、この先、ずっと、こういう使い方しなきゃならない?
うーーーん。でも、歩くよりは、楽なんじゃないかな?
そういうことに、しておこう。

 それにしても、自転車、少し、練習しなくちゃ。
高校生の頃は、肉まん食べながら乗れたのに・・・。



 10月13日(金)

 今日は13日の金曜日だ!いや、ただそれだけなんだけど。

 団地のゴミの捨て方は、不燃物と可燃物を分けて、棟の外の
プラスチックの大きなダストボックスに捨てる。

 午前中、あまりにもゴミがたまったので、捨てに行った。
生ゴミを捨てようと、可燃ゴミのボックスを開けたら、
ボックスのど真ん中に、バナナが一房、置いてあった。
たぶん・・・捨ててあったのだろうけれど。
ほかに、チリひとつ入っていないダストボックスで、
そのバナナも、全然黒くなっていなくて、房には、もぎ取ったあともない。
でも、蝋細工とかの、ニセモノでもなさそう。
「毒入り?」と一瞬思ったけれど、ダストボックスの中のバナナを、
一瞬でも拾ってみようなんて思うのは、私以外にはいそうにない。

 なんだか、とても、いけない物を見てしまったような気がして、
自分が出そうと思ったゴミは、他のボックスに捨てた。

 部屋に戻り、座布団を抱えて丸まった。
今日、18時から、南大沢で行われる集まりに出なくてはならない。
約束してしまった。何の集まりなのか、ほとんどわかっていない。

 昨日は、結局2時間前から準備をしようとしたが、結局、身体が動かず、
間に合わなかった。そこまでの行程にかかる時間をのぞいて、
3時間前から、準備しないと間に合わない・・・。

 何とか、玄関まででた。足が部屋の方に戻りたがる。
重いドアノブを回し、外に出た。9階から見える川面。
秋の、冷たい、湿けた葉っぱの匂いのする空気。
重い気持ちで鍵をかけた。
鍵さえかけてしまったら、歩き出さなくてはならなかった。

 駅前のバス停に着く。終点南大沢まで、どれほどかかるのであろうか?
気が重い。それに、待ち合わせの時間に間に合うのだろうか・・・。

 定刻通りに来たバスに乗り、一番後ろの窓側のシートに座った。
まだ、10月の前半なのに、晩秋のような風景。
人の装いも、ずいぶん変わっていた。バスの中に、薄闇が降りてくる。
湿気寒い。

 バスは、途中、知らない道を何回か通って、南大沢に着いた。
残念ながら、定刻通り。帰りのバス停がどこにあるのかはわからない。
しかも、待ち合わせをしてくれた人を見つけてしまった。

 会場となっている教室にはいると、ずいぶんたくさんの人がいた。
いただけでなく、次から次へと人が入ってきた。
なんだかクラクラした。明るい蛍光灯。たくさんの人。

 三宅島の人間に手をさしのべてくれる、ボランティアの人達、
こんなにたくさん・・・。
なんで自分がここにいるのか、わからないけれど・・・。
なんか変だな、島の人達、南大沢にはたくさんいるはずなのに、
ほとんどいない、私、ここにいていいのかな。どうしよう。
場違いなところに来てしまったらしい。帰りたい。

 が、議事が進むにつれて、意外なことが起きた。
私は、どうやら、南大沢のどこかの何かに常駐する事に
決定してしまったらしい。たしか、電話では、できるかどうか・・・。
で、話が止まっていたような気がするんだが・・・。
ずっと、ぼーっとしていたから、大切なことを聞き落としてしまったんだと思う。
ずっと人と話をしていなかったから、変なこと言ってしまったのだろう。

 困った・・・。なにが起きたのだか、起きるのだか、わからない・・・。


 10月14日(土)

 相変わらず、身体が重いままの目覚め。
時間的には、充分眠っているはずなのに、なぜ、1日中怠いのだろう。
眠れないくせに、何となく眠い。全てが、面倒くさい。
何もしたくない・・・。

 だけど、目が覚めていて、布団の中にいることも苦痛なので、起きあがる。
今日は、それほど寒くない。

 カーテンを開けた。思わず、すぐに窓も開けた。
久しぶりの晴れだ。東京に来て、はじめてかもしれない、
この部屋で迎える晴れ。富士山も見える。
三宅からより、富士山は近いはずなのに、以外と小さく見える。

 大物を洗濯したいが、今日は13時の待ち合わせのため、
あきらめる。

 南大沢に行くためのバスに乗ろうと駅前に行った。
駅前の歩道で、寝そべったり座ったりしている人がいる。
その男性に、時折近づく人は、見たことがある人だ。

 同じ団地に入っている、三宅からの避難者だ。

 おじさんの方は、相当酔っぱらっているようだ。
奥さんが、時々そばに来て一言二言声をかけると、行ってしまう。
どうしようか、と思ったときに、行ってしまった。
酔っているおじさんの方に、声をかけるのは躊躇われた。
おじさんとは、島の中でも、こちらに来てからも、
直接話したことがないから・・・。

 奥さんの方に話しかけようと、思ったとき、バスが来てしまった。
時刻表を確かめたが、次のバスでは、間に合わなかった。
気にはなったが、バスに乗ってしまった。

 バスは、以外に混んでいて、吊革につかまりながら、外の景色を眺めていた。
避難してきて、1月以上、放りっぱなしにされて1ヶ月以上。
お酒が飲める人は、酔って、一時忘れられるのか?
それはそれで、うらやましい部分もある。

 昨日の続きで、支援してくださる人々から、いろいろ教えてもらいながら、
打ち合わせを進める。三宅で使っていなかった頭は、そう簡単には回り出さない。
たぶん、あまり理解できていないのに、一緒に座っていた。
自分が理解できているのかどうかさえ、わからない。
 でも、元気があって、素敵な考えを持っている人と話すのは、
とても新鮮な気持ちになる。ただ、うらやましく思うばかりだが。

 会合が終わった後、主人に迎えに来てもらうことにする。
その時、イトーヨーカドーで使える商品券を持ってくるように頼む。

 この商品券は、私の誕生日に、プレゼントとして、友人からもらったものだ。
ずっと、買い物なんて、と拒んでいたが、ちょうど店があるので、
人前にでるのに、恥ずかしくない程度の洋服が欲しいと思った。

 季節の変わり目の洋服は、何でもかんでも素敵に見える。
私は、普段、自分の服を買うことは、とても苦痛で、
できるだけ避けたい作業だったはずなのに。

 とりあえず、スカートと、Gパン以外のパンツと、厚手のシャツブラウスを
1点づつ買うことに決めて、探すことにした。

 いつもだと、たいてい欲しいものと値段の折り合いが合わず、
または、欲しい物がなくて、辛くなって、買い物を止めてしまう。
が、今日は違った、欲しい物が次々に見つかった。
商品券、ということで、値段の許容範囲がいつもより1千円から2千円
上がっているからだ。
どちらか1方にするのに迷う。こんなの、久しぶりだ。
洋服を買うって、こんなに楽しかったっけ?
その時、何かが心の中ではじけたような気がした。
スカートと、ブラウスを、もう1点づつ買ってしまおうか、と思った。
親にとりあえず借りているバックしかないから、バックも買ってしまおうか。
欲しい物を、何も我慢しないで、なんでも買えるような気がしてしまった。

 気がしたのではなくて、実際買えた。商品券はたくさんあった。
でも、5千円の物なら、10個は買えない、と逆算したとき、
我に返った。最初の予定通り、3点だけ買った。

 車を待ちながら品物を見始めて、商品券を実際手に持って、
品物をかごに入れて、レジを済ますまでの1時間。なんか、変だった。
いつもの自分ではなかった。
 冷静に考えれば、東京でしか着られないような洋服は、
そんなにたくさんあっても仕方ない。
 ましてや、自分に似合うか、どこに着ていくか、も考えていなかった。
ただ、ちょっといいと思った物を全部買おうとしていた。

 どうしちゃったんだろう。商品券を持つときは、気をつけよう。
理性のたががはずれそうだった。

先週   翌週