秋川に児童・生徒を就学させている父母の皆様へ

子供のSOSに耳を傾けない教育委員会でよいのか。

 
噴火災害に伴う全島避難から2ヶ月が経過いたします。当初は1ヶ月程度の秋川での就学予定でしたが、火山ガス等の影響により帰島の見通しは立たず、今後も当分の間は引き続き秋川での就学を継続する事が10月13日に教育委員会より正式に報告がありました。 これは避難を余儀なくしている我々保護者にとって朗報ではありますが、反面、子供達は慣れな寮生活に精神的に不安を感じるなど、問題もあがって来ているのが実状ではないでしょうか。 そんな中、三宅村教育委員会の方針(三宅島噴火災害による三宅村立学校の児童・生徒の秋川高校における三宅村教育委員会の方針)に疑問を持たずにいられません。その方針にはこのように記されています。
 
1.秋川高校内への自宅通学は寮生活が原則となっていますのでできません。
4.小学校児童は、保護者と生活することが望ましいとされていますが、どこで教育されるかは
  保護者の判断によります。
 
これから推測するに教育委員会は『親元に子供をおいて知悪の学校に転校することを奨励(遠回しな強要?)している』としか考えられません。 事実、1.で「自宅通学は〜出来ません」と断言しています。しかもご丁寧に4.では「どこで教育されるかは保護者の判断」と念押しし、「自主転学者には準用保護の認定を配慮している」ととどめを刺しています。 そしてこれを証明するかのように、転校をする子供が増えているのも一つの事実です。 理屈抜きに「子供だけは」と考えるのは親の本能です。週末に子供に会える喜びと、一家団欒のの後に秋川に子供を預ける時の淋しさは親はともかく、子供にとってどの様に影響があるのか心配なところです。
秋川に子供を就学させることを選択している保護者には、さまざまな感がエア方と家庭状況がありますが、この非常時に、必要以上の快適な学校生活の保証を要求している保護者がいるでしょうか。『できれば家庭から通学させたい・したい』という親子共通のささやかな願いも、頭から否定しろといってもむりなのだろうか。 8月18日の噴火を経験しながらも9月1日通常通り学校を再開するといってのけた段階で既に判断能力の麻痺を露呈していたわけで、今更驚きもしないが。
 
――――――――――秋川で頑張っている子供達は三宅島復興のシンボルです――――――――――
規制され、与えられるだけの学校生活に子供達は限界を感じています。教育委員会の規則に従えないのならば、どこでも転校してくれという方針は、子供達の悲痛な叫びのSOSに耳も傾けず、教育環境の整備という本来の職務を放棄して、ただただ事務的に処理しているだけに過ぎない。このままでは秋川で就学する子供はいなくなります。それが教育委員会の目的ならば仕方ありませんが、三宅島に帰ったところで、信用して預ける保護者が何人いるか疑問です。(島に帰ったら預ける以外の選択肢はないのですが)そのくらい今の教育委員会は信用失墜していることを認識してほしい。 忙しいのも理解する。いきなりの環境変化と職務の増大(教職員の方も含め)も承知しているし、保護者も感謝しております。 だからこそ協力してこの局面を乗り越えなければ、全国で支援してくれている多くの方々に申し訳ない。話し合いの必要性を切に感じます。立派な基本方針の通り、災害に負けない逞しい児童・生徒の教育のために、これからが正念場になります。
 
 
児童・生徒支援センターは教育委員会の下部組織ではない
 
先に述べた「教育委員会の方針」の中で、児童・生徒に関わる費用負担についても説明がありました。問題の部分は以下の通りです。
 
4.保護者負担の学用品と教材は、当面の物については寄付と教育委員会で購入いたしましたが、今後発生する用品については、保護者負担となります。
 
5.遺留品については、保護者の負担となります。支援物資でまかなうことを考えましたが、子供達の好みがあり、善意を無にしてしまうことがわかりましたので、保護者負担といたします。
 
この中での「学用品」については既に多方面から寄付して頂いており、保護者が負担しなくても充分にあるはずです。 またこれからも支援はしていただける物であると思いますが、教育委員会がこれら善意の申し入れを拒否しているとしたら問題です。 の衣料品についても同様です。本来、教育委員会がボランティアの分野を担当することがおかしいのです。 児童・生徒支援センターはあきる野JCと三宅島社協が中心となって立ち上げた組織で、その中に教育委員会は入っていないのです。つまり対等な立場でなければなりません。しかし教委の方針はなんら相談もなく一方的に決めてしまったものです。しかも負担しなくて済みそうなものも保護者負担にしてまで。支援センターにとっては屈辱的な行為であり、これこそ行為を無にするものです。こんなこともありました。10月13日、保護者会にインフルエンザ接種の申し込み用紙が配布され、1人3200円負担とありました。複数の子供を抱える家庭にとっては大きい負担です。しかしこれも支援センターにはなんら打診もなかったようで、これを知ったセンターはすぐに対応し、全員分のワクチンを確保して教育委員会に連絡しましたが「検討します」の後日
「教育委員会手配できたのでそちらはいらない」との回答がきたそうです。 どうがかんがえますか、みなさん。
今は非常時です。経済的な負担が我々被災者にとっては大変なことは分かるはずです。それをいとも簡単に
「保護者負担」とする教育委員会の方針は理解できません。 またこれらを少しでもカバーするために支援センターへは存在するのです。 過度の甘えは被災者として慎むべきですが、なんの配慮もしない教育委員会に。もはや子の分野を任せるわけにはいきません。 教育委員会はやるべき仕事に戻りなさい。 支援センタへの連絡員なんかは、教育委員会の仕事ではない。 そんな暇はないはずだ。 秋川高校に就学している子供達だけが三宅島児童・生徒ではありません、多くの転校を余儀なくしている子供達のケアはそうなっているのでしょう。教員にばかり仕事を押しつけず、長期戦になることを想定して対策を練り直さなければ、教育委員会としての存在意義を問われます。なんとかしてください。
児童生徒支援センターは、我々保護者と子供達にとってかかせない存在(教育委員会にとっても支障があったとは思えないが)にりました。 特に月1回の縁日など、慣れない都会生活の中のあって、『オアシス』のようでもあります。 この関係を引き続き良好に保つために、センターと教委、そして保護者の協力とよs理解が大事になってきます。余談になりますが、9月の下旬、センターのある方との会話です。「ある企業から長袖の衣料を子供達全員に頂けることになりました。」そのあと小声で一言「これで私も長袖を着れます」と。
陽も落ち、肌寒い時刻です。その前にも何度かお会いしていましたが、長袖姿は記憶にないことを思いだし、思わず長袖の裾をめくっている自分が恥ずかしかった。
こんな善意を絶対に無にするわけにはいきません。 子供と共に一人も欠けることなく島に帰ることが総てに関わり合う仲間の願いです。
 
平成12年10月26日  
                保護者有志  佐久間 辰巳
                          谷 寿文